元職員の皆様へ

医療法人財団緑生会 水口病院は、株式会社フジテレビジョンに対し、名誉棄損にもとづいて、訴訟提起しました

医療法人財団緑生会 水口病院(以下、「当法人」と言います)は、平成29年10月25日、株式会社フジテレビジョン(以下「フジテレビ」と言います)に対し、名誉毀損被害にもとづいて損害賠償請求訴訟を提起いたしました。
 これは、平成28年~平成29年にかけて、フジテレビが当法人による医療行為について、事実無根の誤った報道を行い、当法人に対する甚大な風評被害をもたらしたことを理由とするものです。

この記事では、フジテレビによる当時の報道がいかに不当で誤っており、悪意に満ちていると捉えられても仕方がないものと言えるか、また当法人がそれによって被った不利益がいかほどのものであったかについてご説明します。

1.訴訟の概要

当法人は、平成29年10月25日、東京地方裁判所において、フジテレビに対し、名誉毀損にもとづき、損害賠償請求訴訟(平成29年(ワ)第36244号)を提起しました。
この訴訟内で、当法人は同社に対し、損害賠償請求及び謝罪広告を求めています。

その理由を、以下でご説明します。

2.問題になった事実関係

 まずは、どういった事実が報道の対象となったのか、事実関係を整理します。
平成28年7月8日、当法人が運営する水口病院において、産婦人科医が、母体保護法14条1項が定める指定を受けないまま、当院にかかっていた患者(以下「本件患者」といいます。)に対して人工妊娠中絶手術(以下「本件手術」といいます。)を行いました。中絶手術自体は、本件患者が希望されたものであり、特段当院からのはたらきかけをしたものではありません。
また、施術した医師は、母体保護法による指定を受けていなかった点において問題はありましたが、当然、産婦人科医の医師としての資格を取得していたもので、水口病院の勤務医でした。この医師は、「産婦人科専門医」であり、かつ「産婦人科指導医」でもあった人物です。

 本件患者は、本件手術の6日後に急死しました。
死亡原因を究明するために行政解剖が行われましたが、死亡と本件手術との間の因果関係は認められず、その後の警察発表においても、因果関係は明確に否定されています。
つまり、本件患者の死亡は、水口病院における本件手術とは無関係なことが明らかになっているということです。

3.フジテレビによる違法不当な報道内容

 ところが、フジテレビは、当時の経過について、以下のような、誤解に満ちた、悪意ともとれる報道を行いました。

3-1.医師の資格を持たないものが施術したと発表した
まず、フジテレビは、上記の水口病院における本件手術は「医師資格を持たない無資格のものが行った」と報道しました。
これを受けて、当時の多数のマスコミが、そろって「無資格のものが中絶手術をした」などと大々的に報道し、水口病院の評判は大きく低下しました。しかし、先に説明したように、水口医院で本件手術を行ったのは「産婦人科医」の資格を持った「医師」であり、しかも「産婦人科専門医」で、かつ「産婦人科指導医」でもあった経験豊かな有資格者でした。確かに母体保護法による指定を受けていなかった点において問題はありましたが、無資格のものが医療行為をするなどの重大な違法行為は、断じて行っておりません。それにもかかわらず、フジテレビを始めとする各報道機関はあたかも水口病院において、無資格医療が横行していたかのような報道を繰り返しました。このような事実が存在しないことは、少し調べればすぐに分かることであるのに、それをせずに「話題性作り」のために誤った報道をし続けたことは、明らかに当院の名誉を毀損する違法行為です。
3-2.当院が、人工妊娠中絶を勧めたと報道した
フジテレビは、本件手術が行われた経緯について、水口病院から本件患者に対し「胎児が育っていないので、中絶した方が良い」と勧めたから、本件患者が中絶手術に踏み切った、と報道しています。つまり、平成28年12月7日、本件患者のご遺族様による記者会見が行われ、それを受けて報道各社は一斉に「水口病院が『胎児が育っていない』と診断したため、中絶手術を実施した」と発表したのです。
そして、そのことが本件患者の死亡につながったかのような発表をして、日本中で話題になりました。インターネット上では、本件病院が、あえて人工妊娠中絶手術を受けさせることにより、流産手術よりも高額な医療費の支払いを受けようとしたのではないかとの憶測の意見が多々見られる状態になりました。

しかし、このようなことはまったくもって、事実無根です。
本件事件において、水口病院のどの医師も関係者も、本件患者やご家族に対し、「胎児が育っていない」とお伝えした事実はありません。また、患者やご家族に対し中絶手術を勧めた事実もありません。
中絶手術は、あくまで本件患者ご本人が希望されたことです。

そもそも、「胎児が育っていないから中絶手術をする」ということは、医学的に非常識です。
実際に胎児が育っていない場合、当面は経過観察とし、胎児の心拍がなくなった時点で流産手術をするのがセオリーだからです。このようなことは、医学界の基本の常識であり、水口病院が間違った対応をするはずがありません。また、流産手術であれば、母体保護法の指定医師が担当する必要もありません。当院には3名の母体保護法指定医がいましたが、当日はたまたま指定医が体調を崩して執刀できなかったので、代わりに別の産婦人科医が執刀したのです。それにもかかわらず、フジテレビを始めとした報道各社は、あえて水口病院が人工妊娠中絶を行ったかのような誤解を与える報道を行い、当院の患者様をはじめ、出産を予定している方や既に出産している方々の混乱を招き、不快感、不安感を与えました。

ネット上でも、「本来は流産の措置で良かったのに、水口病院はあえて人工妊娠中絶を行ったのではないか」などの憶測の投稿が広くみられるようになり、当院の評判は大きく低下しました。このように、事前に何らの検証をすることもなく、話題性作りのために「病院が『胎児が育っていない』ことを理由に人工妊娠中絶手術を勧めた」と断定して報道したことは、明らかに違法です。

3-3.中絶手術と本件患者の死亡の因果関係についての誤報
冒頭に説明したように、本件患者は本件手術の6日後に死亡していますが、最終的に行政解剖により、手術と死亡の因果関係が否定されています。監督官庁や捜査機関からも、因果関係があると指摘されたことは一切ございません。当法人は、その結果が出たときに、直ちにご遺族に対しその解剖記録を開示して、手術と死亡に因果関係がなかった事実について、資料をもってお伝えしました。

それにもかかわらず、平成28年12月5日、本件事件を当初に報道したフジテレビの「みんなのニュース」では、アナウンサーやナレーターなどの出演者たちが、あたかも「水口病院における中絶手術によって患者様が死亡した」と視聴者等が誤解しやすい番組構成で、放送を行いました。
たしかに、ところどころ「因果関係は不明」などと、申し訳程度に断りをいれてはいましたが、因果関係が不明ならば、ニュースの冒頭で本件患者の中絶手術に関する場面を放送する必要などはないはずです。これをあえて放送した理由は、中絶手術によって患者様が死亡したものであることを、視聴者等に印象付けようとしたからとしか考えられません。

実際には、「みんなのニュース」を監修する医療ジャーナリストは、番組の報道前に当院に取材に来ましたが、そのとき、同ジャーナリストは、既に本件患者の診療記録に目を通していましたし、中絶手術と本件患者の死亡との因果関係が不明であることも理解していました。さらに、中絶の理由(当院が勧めたわけではない)についてもご存じの様子でした。つまり、フジテレビは、事実に沿った報道をすることが可能であったのです。
それにもかかわらず、平成28 年12 月5 日に放送された「みんなのニュース」では、上記のように、あたかも「水口病院における中絶手術によって本件患者が死亡した」と印象づける報道を行い、その後も「水口病院が『胎児が育っていない』として、本来不要な人工妊娠中絶手術を勧めた」「医師免許のない無資格者が措置を担当した」などと報道し、日本中に、水口病院が違法不当な措置によって、本件患者を死亡させたかのような誤解を植え付けました。このような報道機関の態度が違法不当でなければ、何と表現すれば良いのでしょうか?

4.水口病院及び当法人が被った、回復不可能な損害

以上のようなフジテレビによる悪意に満ちた誤報の繰り返しにより、水口病院の評判は回復不可能な程度に毀損され、ついには廃院に追い込まれました。
すなわち、マスコミ各社の対応を受けて、インターネット上などで、おもしろ半分の悪意に満ちた第三者たちが、水口病院のことを「殺人病院」などと揶揄したことなどにより、水口病院に対する世間の信用は地に落ちてしまいました。
このことで、病院経営の継続が困難となった上、当法人の経営すらも立ち行かなくなり、既に東京都に解散の認可申請をしています。(2018年2月認可済)

5.当法人は、フジテレビに対し、厳正なる処分を求めます

以上のとおり、フジテレビの「みんなのニュース」を発端とする本件事件に関するマスコミ各社の対応は、事実無根の報道によって水口病院の名誉を大きく毀損し、莫大な損害を与える違法不当なものです。
① 医師資格のない者が人工妊娠中絶手術をした
② 本来人工妊娠中絶手術の必要のない人に、病院があえて手術を勧めた
③ 人工妊娠中絶手術により、患者が死亡した

フジテレビは、上記の3つの重大な点において、明らかに誤った報道を繰り返しています。
少し冷静になって検証すれば、上記の3点がすべて誤りであることを容易に把握できたはずであるのに、過失かあるいは故意にもとづいて、誤った内容を報道し続け、世間を煽り続けたのです。
そのせいで、一民間企業に過ぎない、水口病院が廃院に追い込まれ、当法人が解散の申請をよぎなくされています。

マスコミは、民間企業ではありますが、視聴者等の知る権利に奉仕するための、いわば半公共的な機関です。世間に大きな影響を与える強力な影響力を持っており、常にそのことを自覚しておくべきです。
このような公共の役割を持つマスコミが、話題性維持や結論ありきで十分な取材や検証を行わず、視聴者等を誤らせる報道を繰り返し、世論を混乱させて病院を破綻に追い込むことは、明らかに「報道の自由」の範疇を超えて他者の権利を侵害するものと言え、違法かつ不当で、許されるものではありません。
当法人は、本件訴訟においてこの点を公開法廷の場にて明らかにし、フジテレビに対する責任追及を徹底して行っていく所存です。

なお、フジテレビは、情報番組である「とくダネ!」においてもBPO (放送倫理・番組向上機構。)から放送倫理違反を指摘がされた事実が明らかになっています。同社は、上記番組において医師法違反事件の容疑者を別の人物と取り違えて報道したのです。
フジテレビによる報道内容は、BPOからも問題視されていることが、推測に難くありません。

当法人は、本件当時の混乱によって時期を逸してしまったものですが、もし当時にBPOに対して申し立てをしていれば、上記「とくダネ!」にあった医師法違反の人物の取り違え問題と同様に、フジテレビによる放送内容が「放送倫理」に反しているとして、とりあげられていたであろうと考えております。

平成30年4月19日
医療法人財団緑生会 水口病院

水口病院

吉祥寺 水口病院