「新コロナウイルス禍、フジテレビに対する裁判の継続を断念しました。」

新型コロナウイルス禍による事態を重く受け止め、フジテレビへの裁判の継続を断念しました


本年3月末、東京地方裁判所において当法人が株式会社フジテレビジョンに対して提起した、名誉棄損による損害賠償請求事件の第一審判決が言い渡されました。
残念ながら、判決内容は主文・理由ともに当法人の立場から到底承服できる内容ではありませんでした。
本来ならば速やかに控訴手続きをとり、正しい判断を求めて控訴審で争うべきところでしたが、当法人は控訴を断念しました。

1. 控訴を断念した理由

 理由は次の通りです。

(1)訴訟提起時には予想できなかった新型コロナウイルスによる混乱の発生

現在、訴訟提起の段階では予想だにしなかった新型コロナウイルスパンデミックにより、世界中で大混乱が発生しています。特に医療現場では多くの医療従事者が犠牲となり、過酷な状況に置かれながらも昼夜を分かたず身を挺して感染患者の救済活動にあたっています。
このような状況下において、同じ医療機関である当法人が自らの名誉に固執して裁判を続けることに大きな疑問が生じました。

(2)国民が一致団結して難事を乗り越えるべき状況

新型コロナウイルスによる未曾有の災禍により、多数の国民、世界中の人々が甚大な負担を余儀なくされています。苦しい現状を乗り越えるには、日本国内にとどまらず世界中の人々が手を取り合い、互いに協力・連帯しながら難事の解決に向かう必要があることが明らかです。
それにもかかわらず、当法人が一民間医療法人の名誉回復と財産的損害の賠償を求めて報道機関と争いを続けることは適切なのか。
裁判所も社会的資源の1つです。私たちの名誉回復のために争いを続けるよりも、国民の利益に資するような有効な利用のしかたがあるはずです。

「医療者」として、これまで持てる力のすべてを注ぎ込んで人々の命の救済や新しい命の誕生を支えてきた当法人です。今新型コロナウイルスの蔓延が危惧される中、自らの名誉に固執して争いを繰り広げることは、妥当とは言いがたいのではないか。

そう考えたときに、私たちは断腸の思いで控訴の断念を決断いたしました。

報道をきっかけに風評被害を受け廃業にまで追い込まれた当法人にとって、控訴の断念は苦渋の決断以外に何ものでもありません。それでも新型コロナによって苦しんでいる多くの人々、「病院」という戦場において必死で戦っておられる医療者の方々の現状を思えば、当法人としてこれ以上裁判を続ける決断ができませんでした。

2.適正な報道のあり方が実現されますように

報道機関の使命は、広く世間へ真実を伝えて国民の「知る権利」に奉仕することです。
その実現のために報道内容の真実性や正確性の確保が求められるのは当然です。

ところが当法人の運営する水口病院は巨大メディアによる事実に反する報道によって甚大な風評被害を受け、80年余の歴史に幕を閉じざるを得ませんでした。

本件裁判は、もともとテレビ局における「視聴率確保へ向けた偏った報道体制」のあり方を問いただす目的で起こしたものです。
フジテレビの過剰に自社利益を追い求める姿勢と1人のジャーナリストの売名行為により、本来行われるべき検証も実施されずに事実と異なる名誉毀損の内容がニュースショーとして流れてしまったのです。こうしたマスコミのあり方に対しては、問題意識を持っておられる方も多いものと思われます。

当法人の主張が通ればゆがんだマスコミの姿勢に風穴を開け、多少とも変化をもたらすことができたかもしれません。それを思うと今回の控訴断念は残念ではありますが、状況としてやむを得ません。今の当法人にできる「最善の決断」と確信しております。

3.ご支援いただいた方々、出産された方々、医療関係者の方々へ

本件裁判に関心を持ちご支援いただいた斯界医療者の方々、水ロ病院の職員や関係者のみなさまには、心から感謝申し上げます。
報道による混乱のさなか、不本意な転院を余儀なくされた患者さまも多数おられます。ご迷惑をおかけしたことをお詫びするとともに、出産されたお子さまともどもご家族全員の益々のご多幸を心よりお祈り申し上げます。

今、最前線にある医療機関、医療従事者のみなさまには、これまでのご奮闘に衷心より敬意を表し言葉では言い尽くせないほどの感謝の情を抱いております。今後長く続くであろうウイズコロナ時代、どうかご自身の身の安全を何より優先しつつ、人々に救済と安心を提供して下さいますようお願い申し上げます。

2020年6月1日
医療法人財団 緑生会
清算人 吉田文彦

水口病院

吉祥寺 水口病院