マスコミの当院に関する報道姿勢に関する意見

 医療法人財団緑生会(以下「当法人」といいます。)が運営する水口病院(以下「当院」といいます。)における、母体保護法14条1項に基づく医師会の指定を受けていない医師が、人工妊娠中絶手術(以下「中絶手術」といいます。)を行ったこと(以下「本件事件」といいます。)は、マスコミを通じ、既に広く報道されているところです。本件事件については、完全に当法人の不徳の致すところであり、深く反省しております。

 しかしながら他方で、本件事件に関する報道は、マスコミにより意図的にミスリードされたものであり、「誤報」ともいえるものです。これら一連の報道の影響により、当院に入通院されていた皆様方、当院でお産等をされた皆様方、その他関係者の皆様方に、多大なご不安、ご迷惑をおかけする結果となりました。

 当然のことながら、当法人が本件事件を起こさなければ、マスコミで報道されることはありませんでした。そのため、報道に関する一次的な責任は当法人にあります。しかしながら、公共機関であるマスコミが意図的なミスリードにより社会に誤った認識を持たせることは到底看過できません。当法人としては、マスコミの報道姿勢に一石を投じたいと考え、本意見を公表するものです。


1.意見の趣旨

 本件事件に関する報道は、意図的にミスリードされたものであり、マスコミの報道姿勢は極めて不当なものです。

2.意見の理由
(1) マスコミの報道内容

 マスコミにより具体的表現は異なりますが、概要、「①当院において医師の資格を持たない者が、②胎児が育たないと診断された患者様に対して中絶手術をし、③その結果、患者様が死亡した。」と視聴者ないし閲覧者(以下 「視聴者等」といいます。)が誤解する報道をしました。

(2) 報道内容が事実に反すること
ア ①医師の資格を持たない者が手術をしたとする点

 本件事件で中絶手術を担当した医師は、医師の資格と産婦人科専門医の資格を有していました。

イ ②胎児が育っていないと当院が診断したとする点

 本件事件で当院が息者様に対し、胎児が育っていないと診断したことはありません。また、当院が患者様に対し中絶手術を勧めた事実もありません。

ウ ③中絶手術の結果、患者様が死亡したとする点

 中絶手術と患者様の死亡との因果関係は、行政解剖で否定されています。
また、これまでに監督官庁や捜査機関から、因果関係があると指摘されたことはございません。そのため、当法人としては中絶手術と患者様の死亡との聞に因果関係はないものと考えています。


(3)報道内容が事実に反する憶測を呼んだこと

「胎児が育っていないと診断されたため、当院に中絶手術を勧められた」
と報道されたことにより、患者様は稽留流産であり、本来流産手術を行うべきであったのではないかとの意見が、インターネット上で広くみられるようになりました。
 他方で、当院は確かに患者様に対し、中絶手術を行いましたので、当法人はその旨のプレスリリースをしました。そのため、当法人とご遺族様の話が食い違い、当院に対しては流産手術をすべきであるにもかかわらず、当院の利益のためにあえて患者様に中絶手術を勧めたなどと、事実に反する憶測を呼びました。当然、当院がそのような行為に及んだことはありません。

(4) マスコミの報道姿勢の問題点
ア 「医師会の指定を受けていない医師」を「無資格医師」としたことについて

 大多数のマスコミは、本件事件で中絶手術を担当した医師が「無資格医師」であると報道しました。しかし、「無資格医師」では「医師資格を持たない医師」と視聴者等の誤解を招きます。本件事件では、中絶手術を担当した医師が、母体保護法14条1項に基づく医師会の指定を受けていなかったことが問題だったのであり、これを「無資格医師」と表現することは不適切です。

イ 死亡との因果関係について

 当法人は、本件事件が報道がされるより前に、ご遺族に対し、診療記録を開示しました。そして、本件事件を最初に報道したフジテレビ「みんなのニュース」を監修する医療ジャーナリストから取材を受けたとき、同ジャーナリストは、患者様の診療記録に事前に目を通したうえで取材に臨んでいる様子でした。また、同ジャーナリストは、中絶手術と患者様の死亡との聞の因果関係が不明であることも理解していましたし、中絶の理由もご存じの様子でした。そのため、少なくともフジテレビは事実に沿った報道をすることが可能であったと思われます。
 しかしながら、平成28年12月5日に放送された「みんなのニュース」では、アナウンサーやナレーターが、「亡くなったこととの因果関係は不明」などと、ところどころに断りをいれながらも、冒頭でご遺族様が患者様の死に対する想いを述べる場面を放送し、「中絶手術により患者様が死亡した」と視聴者等が誤解しやすい番組構成で放送を行いました。因果関係が不明ならば、ニュースの冒頭で患者様の死亡に関する場面を放送する必要はないはずです。あえて放送した理由は、中絶手術によって患者様が死亡したと視聴者等に印象付けようとしたからに他なりません。
 そして、他のマスコミも、みんなのニュースの報道内容を受けて、同様に誤解を招く報道を繰り返しました。そして、上記2、(4)、アと併せ考えると、マスコミは「当院で医師の資格を持たない者が中絶手術を行ったことにより患者様が死亡した」と、視聴者等を意図的にミスリードしようとしたことが明らかです。

ウ 胎児が育っていないと当院が診断したことについて

  平成28年12月7日には、ご遺族様の記者会見に関する報道がされました。これを受けてマスコミ各社は、中絶手術の理由が胎児が育っていないと当院に診断されたから」と放送しました。しかし、上記2、(2)、イのとおり、係る診断を当院がしたことはありません。また、既にインターネット等で多数指摘されているように、胎児が育っていないから中絶手術をするというのは、医学的に見て考え難いものです。
 また、胎児が育っていない場合は、しばらく様子を見てから流産手術をすることが通常です。しかし、流産手術であれば、母体保護法の指定は必要ありません。そのためこの場合、手術を担当した医師が無資格であると報じること自体がそもそも誤りです。
 このように、医学的に見て考え難い、あるいは誤った内容の報道を、事前に検証もすることなく放送したことで、当院の患者様をはじめ、お産を予定している、あるいはお産を経験している方々の混乱を招き、不快感、不安感を与えました。


(4) まとめ

  以上の左おり、フジテレビ「みんなのニュース」を発端とする本件事件に関するマスコミ各社の報道は、「当院において医師の資格を持たない者が中絶手術を行ったことにより患者様が死亡した」と視聴者等に印象付けるように、意図的にミスリードされたものです。また、現実に、このような印象を持たれた方による当院に対する厳しいご意見が、インターネット上に溢れています。
 マスコミは、視聴者等の知る権利に奉仕するための公共機関です。このような公共機関としての役割を持つマスコミが、結論ありきで十分な取材や検証を行わず、視聴、者等をミスリードする報道をし、世論を誘導することは、極めて問題であると考えます。
 マスコミには、客観的資料に基づいた、冷静かっ正確な報道をしていただきますよう、強く求める次第です。

平成28年12月14日
医療法人財団緑生会 水口病院

水口病院

吉祥寺 水口病院